整体通信11月号より 乾きますよこれから
季節の体~冷えと乾き
秋も深まると体が乾きます。秋口には湿気と気温変化への感受性によって水分の吸収が上手くいかないために、熱めの汁物による発汗と体温上昇と塩気を伴う水分摂取が最も効率が良いのです。
空気が乾いてくると、体が水を吸収しやすくなるので、冬から春先にかけては水を飲むだけで水分は吸収します。ところが、春から夏にかけての発汗が充分でない人は、発汗に伴う括約筋の運動がおこなわれなかったために心肺機能が充分に養われず、体温調節や水分保持、平衡感覚などの乱れや、皮膚の乾燥により痒みや、呼吸器系の風邪を誘発しやすくなります。これは、夏の暑さによって負担がかかった人や、薬の服用量が体の負担になっている人にも観られます。それらは中毒の影響によるものです。
いずれも体液が濃くなるために臓器の粘膜や皮膚を余分に刺激します。痰が濃くなったり、粘膜が過敏になったり、皮膚がカサカサするのはそういうことです。具体的には口内炎、中耳炎、空咳、頻尿、風邪、切れ痔、水洟、潰瘍、膀胱炎、腎臓の腫れ、膝痛、喉の不調などが挙げられ、何処にくるかはその人の疲れが集まりやすい部位となります。大人になってからでは修正は遅いので、その人なりに体を上手く使ってゆけるように操法なり指導なりで変えてゆくか、せめて次世代に関しては胎内から出産後要所要所で時機を逃さず整体操法による体作りをおこなっておくかでしょう。女性は初潮まで、男性はせいぜい27歳くらいまでには方向性が定まります。それは体のできを通して人生にまで及びますので馬鹿にできません。
体が乾くと冷えの影響を受けやすくなります。また、睡眠中の持続的な熱刺激は体温調節機能の破壊から、腎臓の変動を生じます。寝るときに電気毛布や電気カーペットをつけっぱなしにしたり、こたつの中で眠ったりしないようにしましょう。入浴後すぐに布団に潜るのも、褥内の蒸れから朝方の冷えを誘発し、睡眠中は無抵抗のため、ことさらに悪影響がありますので要注意です。どうしても寒いというのは体温調整機能の乱れであり、がん細胞は体温の低い部位や、細胞が早く入れ替わる粘膜上で、血行が悪いときに遺伝情報が細胞死を防ぐモードに切り替わることで生じます。健康な人でも日々生じていて、正常な場合は免疫機能によって滅ぼされていますが、体温の低い部位では免疫力は低下して、老廃物や悪い細胞の温床となりやすくなります。さらに、胸前面中央の胸骨部が縮んで伸びが悪いと、免疫細胞の産生も緩慢になり、一層のダメージを負いやすくなりますから、この時季はリンパ体操や胸椎5番の体操、正座からの股関節体操などを習慣にしておくと良いと思います。それと丼一杯の熱めの汁物です。
たくさん食べると汗が出る仕組み
食事をすると汗が出てくることはありませんか。あれは何故なのでしょうか。発汗に大いに影響するのは小脳、肺機能、腎機能です。それなのに何故食べるという消化器系の運動によって発汗するのかというと、胸椎5番が刺激されるからなのです。では何故刺激されるのでしょう。また、それは本当でしょうか。これより先は冗長な問いかけは止めて説明に徹します。
まずは口内にものが入ると粘膜や味蕾、歯根などの刺激を介して脳に信号が送られます。次に飲み込むときは気道が収縮して食道が開き、呼吸の再開と共に食道の伸縮運動によって噴門という胃の入り口に送られます。そして胃の中の粘膜への接触と共に胃の運動が活発になります。
つまり、脳と呼吸器の働きが賦活するのです。さらに食道の伸縮運動は汗孔の開閉運動に関係する括約筋の働きによります。ということで実は食道の働きと心臓の働きは非常に関連深いのです。食道が働くときには食道や心臓への神経が出ている胸椎4番のすぐ横も興奮状態となり張力を増します。つまり、胸椎4番の動きに影響が及ぶというわけです。更に胸椎6番には胃袋へ繋がる神経が出ていて、胃袋の活動状態が興奮刺激となって、6番の動きに影響を与えるのです。よく動く椎骨に上下から挟まれた5番も興奮刺激を受けることで、可動性の良い状態であれば発汗が誘発されるというわけです。熱いものや、辛いもののような、粘膜への刺激がより強いものを食べたときほどその傾向が増すことは、今更説明の必要はないでしょう。
しびれ
循環系の痺れと神経系統の痺れがあります。端的に言えば筋肉か神経どちらかの影響です。脳ばかりが取り上げられがちな近年ですが、記憶というものは筋肉にも全て宿っています。筋肉ということは内臓もそうで、整体操法においては腹部の観察から頭部の損傷や打撲の状況を知り得たり、腹部の調整によって心理的な調整や解毒機能の賦活など、観察点でも調律点でも応用してきました。これは中医の古法にも通じていて、昔から日本人は腹を重視してきたのです。
さて、このような筋肉の状態をモニターして脳に還元するのも神経の役割であり、一方で脳からの指令を送るのも神経の役目です。それ故神経と筋肉、果ては心に至るまで別々にする道理はないのですが、敢えて分別すれば、筋肉か神経かということになります。
筋肉の硬直や緊張、弛緩などによる血行不良が痺れの元である場合、温熱によって一時的に軽快復します。神経的なものの場合は神経そのものの器質的要因による伝達阻害である場合が多く、温めても楽にはなりません。但し、脳の血管硬化も元はと言えば筋肉などの運動系の偏りからくることが多く、脳の出血でなければ頸部や後頭部の蒸しタオル法の継続によって、間接的に回復する場合もないとも言えません。
筋肉の弾力を失わせるものの要因として、体の使い方の偏りや、中毒などがよく観られます。中毒というのは暑さもそうですし、薬や心理的ショック、過食などによるものも含みます。とりわけ降圧剤による筋力低下はよく観られます。加齢や疲労などによって解毒の機能が衰えて薬の排出までの時間が掛かるようになると、代謝が間に合わず筋力を盲目的かつ過度に低下させます。心臓の筋力が弱まれば脳へ送る血液が充分に行き渡らず、頭がはっきりしなくなったりする事例も、これまで数多く観て参りました。
偏って緊張の抜けにくい部位が血行を妨げるため、血液を送ろうとして血圧を上げているのですから、部分の筋緊張を解いたり、血管硬化を解くため運動系に働きかけて、発熱を機会あるごとに繰り返すことで徐々に回復させれば良いのです。実際多くの場合、胸部から前腕にかけてと、首の緊張、腰の下がりから脚部の過緊張による痺れがほとんどです。胸が下がって首から項を引っ張って脳の血行不良を起こして脳から神経へと流れている場合は、体操と呼吸法による肋骨挙上と蒸しタオル法を併用します。