呼吸の藝(mental arts)

*mental arts というのは、ブログのパーマリンクのために、私が今考えた造語です。
心術といっても差し支えないのですが、ネタとしてはたくさんあるものの、この一件のことも書くかどうかよく考えました。
まあ、大丈夫だろうと思い、公開します。

フランスパリでのセミナー(と書くと怪しい響きですので、ここでは講習会と書きます)の供で、井本先生にヨーロッパへ連れて行っていただいたときのことです。
一つ目は成田空港だったと思うのですが、何か待ちで大勢が並んでいて、我々も順番待ちをしていたのです。ところが急に井本先生は荷物を持ってツカツカと先へと歩んでゆかれますので、みんな待ってるんですと私も一言二言小言を言いながらしれっと付いていきました。
係員のきれいな女性(ここだけははっきりと覚えています)に近づき、当然のことながら注意されることだろうから、私が悪かったことにして…などと考えていると、
美女「はい、結構です。あちらへどうぞ。」
F岡「ありがとうございます。失礼いたします。(??????)」
井本先生は平然と歩いて行かれる。
追いつきざま、
F岡「一体どういう訳でしょうか。何をなさったのですか?」
井本先生「呼吸ですよ。」の一言。
F岡「なるほどぉ。(ぜっんぜんわからん!)」
何をどうするのかなど具体的な説明など一切ありません。本質的なことは感じて学び取る、悪い言葉で言えば「盗め」ということです。

二つ目はパリのルーブル美術館でのことです。
井本先生と私と、あとどなたか1〜3人がその時一緒に行動していたように思うのですが、ちょっとよく思い出せません。
とにかく、行ってみようということで、正面の三角の特徴ある建造物に向かって左に行ったのです。
どうすれば良いのかよくわからないまま、辺りを見回すと行列ができていました。
F岡「何かあるのでしょうかね」
どうもピンとこないままです。
井本先生「あちらがあいてますよ」
じゃあ行こう行こうということで、訳もわからずそこを通って、複数の男たちが、やはりきれいな女の係の人(これもはっきりと覚えています)が行列の先端らしきところで何やら差配をしている様子を尻目に、スタスタと館内に入ったのでした。列に並んでいた人たちも、ポカ〜ンとしていたように思います。今ひとつピンときていなかったようでした。
F岡「あの女の人、何か言いたげでしたけど。」
全員「…」
入ってしまえばこっちのものです。
あれはきっと入館待ちの行列だったのでしょう。よくわかりませんけど。今でもよくわかりませんが、こんなものなのだなあと合点がいったのでした。
上手く説明はできませんが、以後なんとなしに呼吸の術程度ならまねごとができるようになりました。
井本先生のような藝の領域にはまだまだ到達できません。
間近で観ることによってのみ、近道を通って会得できるのでしょうから、貴重な体験を得た…と感慨にふけるどころではなく、他にもまだまだこのようなことを目の当たりにすることが多くて書き切れません。
大変贅沢な学習の機会を得ることができ…というよりも、手取り足取り教えることは致しませんと仰りながらも、結構ツンデレに色々教えて下さっていたのでした。手取り足取りはありませんでしたが、やって見せてくれていたのは、当時からわかっておりました。つまり、機会は常に与えられていて、料理できるかどうかは受け取る側の問題なのでしょう。

この話は別の話で、モンゴルに行ったときのこと。
心術というよりは頓智のことなのですが、現地では当時はまだ民間の関所、要するに権限のはっきりしない御仁が、通行税のようなものを要求することが罷り通っていました。
ツアーのバスで、大きな亀の形をした大岩のところへ行く道中で、銃を持った複数の男たちに止められました。
あとで聞いた話では、他のツアーのバスは例外なく乗客一人あたりいくらという割合で金を巻き上げられていたそうでしたが、我々のガイドのダワ・ドルジさんが、日本人側のツアーの案内人の女性(この方も美人だったことをとてもよく覚えています。人妻でしたが)に何やら話し、何かを受け取り、関所の人に渡していました。そして、そのままバスは発車しました。
何もわからないからトラブルだったのかと思って、みんなが何があったのか聞いたところ、ダワさんと案内人の方が話してくれました。
先ほどの場所では、外国人ツアー客を目当てに通行料を巻き上げようとするらしく、ツアーのほうでも折り込み済みで、必要な費用として、皆さんに支払いを求めていたそうですが、では何故我々がお金を払うことなく通過できたかというと、ツアーも最終日近くなっていて、不要になった名簿のようなものがないかを案内の人に確認して、それらしき日本語の名簿を、「高値で売れる」と言って惜しいものをあげる風に渡して言いくるめたのだということでした。みんな大爆笑でした。痛快でした。
このようなことができたのも、何かに精通していたからなのでしょう。相手はホンモノの散弾銃を持っているのにたいしたものでした。

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