秋(整体通信10月号より)

 秋は転ぶ季節です。汗の処理不足による腎臓疲労が主な原因です。10月号に書いておけば間に合うのが通例でしたが、今年は秋の体になるのが9月の第二週から順次と、かなり早足でした。そこでまだ暑いうちから口頭で、寒くなるのが急であるから気をつけましょうと注意喚起してきました。如何でしたか。

 秋の体は食べても平気な、丈夫な胃袋が備わった状態と共に、低温域変動への感受性の鈍さからくる冷え、朝夕の低温と日中の暑さの差からくる汗の内攻による腎臓疲労と胃酸過多がその特徴です。

 汗の内攻というのは、寒くなると皮膚が縮む一方で、汗をかくような気温であることから、出ようとして準備された汗を他の形式に変えることで老廃物の処理をする必要が生じた状態のことです。皮膚や筋肉や神経が緊張して痛みや痒みを生じたり、胃酸に化けてみたり、嘔吐や下痢になってみたりというのが一般的で、端的なのが風邪による発熱に伴う発汗そのものです。

 さて、今年の夏は気温が高いだけでなく、太陽光線がレンズ効果で強い刺激を生じていました。水蒸気かエアロゾルか何かで散乱収束したからだと思うのですが、実際のところはわかりません。ただ、感覚的に痛かったように感じました。こういう暑さの元では個体自身の身を守るため、生殖に振り分けるエネルギーが少なくなります。行為ではなく、機能的にそうなるのです。自己保存本能です。他方の種族保存本能とエネルギーを配分しながら生きているわけです。

 30年~40年前までは、夏は適度な発汗によって新陳代謝が促され、体が良く緩んで体力を養える時季でした。体温上昇に使うエネルギーは必要ないので、消化器の働きは緩慢となって休まり、食べ物を必要以上に欲しないのが普通でした。そのため、秋口で汗の内攻という問題と共に胃酸過多が始まり、消化の悪い果物を欲して動きの悪い胃腸を刺激し、調子を整えてから秋の体になって、発汗しにくくなることで老廃物処理に関わって腎臓疲労が起こり、腰が下がって脚が上がりづらくなることで転びやすくなり、脱塩が進まないことで血管が緊張持続し、体温上昇や発熱などを経ることでで血管の弾力が回復できれば良いものを、緊張が継続し続ける体の人に限って言えば、血管硬化が始まって、脳や心臓、四肢や節々の血管が詰まったり破れたりする体になってゆくのです。

 近年の夏は暑さから身を守ろうとして肋骨の可動性が悪くなりがちです。肺の中に湿熱がこもることで刺激を受けて表面に力が及ぶことでそうなります。すると呼吸が苦しくなったり息をすると神経痛のようになったり、気分が落ち込んだり、頭が痛くなったりなどなど様々な状態になって表れます。ずっと力を入れ続けるわけですから、消費エネルギーも多いため、食べ過ぎと言うほど食べても大丈夫になっています。そのツケは秋口の風邪として払うようになっているのですが、8~9月に風邪をひいた人は、覚えがあるのではないでしょうか。もちろんそれだけが理由ではありませんので自分を責めないでいただきたい。

 これらのことから、秋口は一気に過ぎ、秋口の解説を書いた整体通信9月号がまだ配られていた9月第二週には、胃袋を壊すことなく既に秋の体に入った人が現れ始め、これは一気に寒くなりますよと口頭で伝える羽目となりました。ずっと使い続けていた消化器ですので、準備期間が必要なかったのです。この夏に太った人も多かったのではないでしょうか。私もその一人です。身を守るために硬くした胸郭をよく動かすことで、エネルギーの消費をしてこられた方は、10月に入ると食欲が落ち着いて引き締まりますが、肋骨の硬いままで、秋は皮下脂肪を蓄えるため食欲が増す時季だということを免罪符のように言い訳しながら節制しない人は、首や頭が痛くなってきているはずです。自制してください。

 動植物をよく観察していると、以上のようなことは飲み込めることと思います。柿の実がならなかったりナスの花芽が少なかったり、寒冷地向け品種の稲は空籾が多かった、春咲く花が秋に狂い咲いたなど。

 これからは、空気中の湿気が体が水分を吸収する要求を妨げ、潜脱水(藤岡造語です)という自覚のない乾きによる、粘膜、体液の異常から様々な症状が起こります。また、暑さに慣れている体は冷えに対する感受性が鈍く、寒いと感じたときにはもう冷えているものです。冷えると乾きます。冬の空気が乾燥しているときの乾きには、水分の要求も吸収力も亢まっているので水を飲むだけで構いませんが、今の時季には熱めの汁物を多めに摂ることで、水分の吸収を促すことができます。

 乾いた体の特徴は、痰が濃くなる小便が濃くなるなどの体液の異常、暑いときも寒く感じるなどの体温調節の異常、ピリピリ痛む痒くなるなどの皮膚感覚の異常、首の筋肉のこわばりからくる目耳鼻の異常、関節の異常などがあり、今から特に増えるのは濃い体液が、乾きによって過敏になった粘膜を刺激しての口内や小便の異常や痰の絡み、神経痛に似た痛み、目のかすみなどです。酷いときは血管が詰まる異常が起こります。

 汗をかいたら冷える前に処理をし、特に首を冷やさないこと。汁物を習慣にして乾きを防ぎ、腎臓の負担を軽減することが要諦です。熱めと塩気で発汗調節機能を刺激し、水分吸収保持を亢めつつ、水分を摂るのが急処になります。

趾骨間の操法 

 体のどこかが冷えて影響が出ているとき、臍の右下だけでなく、足の趾骨間三四趾間が狭くなって緊張してきます。この部位は消化器の働きの善し悪しが現れやすいところで、冷えや、妊娠中毒も含む消化器系の異常を表したり、逆にここが冷えることで消化器に影響してお腹が痛くなることもあります。

 内臓の病気がある場合に特定の部位がいつまでも痛んだり、痛めやすくなることもありますが、通常はそこまで心配する必要はないでしょう。

 足の指をギュッと握ったときにげんこつになる部分から足の指先までを趾骨、そこに繋がって足の甲の中にある五本の骨を中足骨といいます。ですから、趾骨間操法はげんこつの縁の部分におこないます。整体操法を学んだはずでも時々間違って、中足骨の間を趾骨間だと言って痛くもみほぐそうとする人がいますが、それはさほど効果がありません。正確に趾骨間を捉えれば、原因不明のこの時季の腹痛、特に女性に多い腹痛によく効きます。

 狭い趾骨間を見つけて、指を置き、裏から挟んで手の指先に注意を集めるだけで構いません。揉まないことを覚えたら、指を小さくスライドさせて内外に角度を微調整すれば更に効果的です。

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